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連載 東京不思議迷子 第4回 「銀座」

東京不思議迷子 第4回 「銀座」
写真・文 インベカヲリ★ ゲスト IIDA REINA(霊能者)
Posted on 2012.03.31 SAT

本日は、もっとも心霊スポットにふさわしくないと言える場所、銀座へ行って来ました。 今回お供してくれるのは、吉原遊郭の回で同行してくれた霊能者のREINA先生です。 吉原遊郭へ行った際に、 「今度はもっと都会がいいわ。麻布とか白金とか、下町から離れましょうよ!」 と話していたので、銀座を選んでみました。 今回は下調べ一切なし。行き当たりばったりで行きたいと思います。
果たして、何が見えるのか…!



待ち合わせ場所である銀座三越前に着くと、 真っ白のコートに、白狐の襟巻きをしたデラックスなREINA先生が登場。 どう見ても銀座のマダムです。 三越で購入したらしいクッキーを箱ごとプレゼントされ、 紙袋をさげた私はすっかりショッピング中のような人になってしまった。 こんなんで不思議体験できるのだろうか…。



煌びやかな銀座の街と、晴れ渡る青空。 この地で暗い側面を探すほうが難しいのではないか、と今更思いつつ、 ならば銀座の中でもっともディープな場所へ行こうと、高級クラブ街へ向かうことにした。

高級クラブが密集するのは、8丁目だという。 って言われても高級クラブ街など意識して歩いたことがないから、8丁目がよくわからない。 住所を頼りにテクテク歩く。



おっ!?クラブらしき看板が並ぶビルが見えてきた。ここが8丁目かあ。 さすがに昼間の時間帯は、シャッターも閉まり通行人もまばら。

と言っても陰湿な雰囲気はまるでなく、どこもかしこも何だか陽気だ。 「このへんは悪い気なんかないわよ」 と、REINA先生もあっさり。 むむむ、とはいえ日本一の繁華街。 男女のいさかいや、女同士の嫉妬の念もあるだろうに。 不況の今は、闇を抱えた部分も多そうだけど…、とそれとなく促してみるものの、 「そんな感情より銀座の明るい雰囲気が勝っちゃうのよ」 と、きっぱり言われるのであった。 さすが高級な土地だけあって、歌舞伎町や六本木とは根っこから違うのだろうか。



「あら、ここのかりんとう有名なのよ。こんなところにお店があったのね」 と、不思議探しそっちの気で、有名店のお菓子に目を輝かせるREINA先生。 「あらあ、ここのケーキも美味しいのよ」 「そうそうこのお寿司!高いけど人気なのよ!」 と、歩くたびにキャッキャとはしゃいでいる。 こんなに食通だったなんて。

ちなみにREINA先生は、霊能者としての修行を始めて以来、 能力を高めるために牛・豚や酒などを一切口にしないらしい。 醤油ですらアルコールの入ってないものを選んでいるというから徹底している。 食べられるものは、野菜、果物、鶏肉など。 つまり、いくら美味しそうなものを見つけたって、 そのほとんどを自分では食べられないということなのだ。なんて、辛い生き方。 「最初は我慢するのに苦労したけど、今はそれが当たり前だから」 霊能者という仕事の大変さを垣間見るのであった。



高級クラブ街が集まることで有名なウォータータワービルも これといって悪い雰囲気はない。



怪しい隙間を見つけて覗き込むも、やっぱり何も感じない。 やはり銀座に陰を求めるのは間違っているのだろうか。 我々は諦めて移動することにした。



安藤七宝店のからくり時計に、目を輝かせるREINA先生。 ここの時計は決まった時間になると、人形たちがパフォーマンスをしてくれる。



休日の銀座はショッピングをする人で溢れかえっていた。 どこもかしこもクリーンだ。



ならばと、銀座の中で私がもっともディープだと感じている 警察博物館へ行くことにした。



館内は写真NGなので、代わりにピーポ君と一緒に記念撮影。

正直、こういう企画で警察博物館に来ていいものなのか悩んでしまう。 なぜならここには、ナイーブな人には直視できないような 心痛むものが展示されているからだ。

1階には、白バイやヘリコプターが展示され、 子供のための「おまわりさん なりきり体験」コーナーもあり、 とても賑やかな雰囲気なのだが、問題は3階。 ここには226事件や、浅間山荘事件など、 あらゆる事件で殉職した警察官の顔写真や名前、 そして事件当日に身に着けていた戦いの跡残る制服などが並べられているのだ。 犯人にバッサリと切られた衣服を見ると、そのときの情景が目に浮かび、 心に突き刺さる。命がけで犯人に立ち向かう警察官という仕事に胸が熱くなるのだ。 私はそれらに惹かれ、警察博物館へは今までに何度も足を運んでいる。

3階に来た瞬間、REINA先生は身をこわばらせた。 「無念さを感じる。自分はもうダメなんだっていうのと、 仕事として真っ当しないとという両方が混ざった感じ」 あまり見ていられなかったようで、 ショーケースの前も急ぐように通りすぎていった。 よほど感じるものがあったのだろう。

3階の展示室には、歴代の警察服も展示されている。 昔のデザインの物々しさも関係しているだろうが、 制服がズラっと並ぶ姿は圧巻。 まるで本当に警察官が立っているかのように威圧感があり、 私はそれがとても不思議だった。 「これは一回誰かが着てるでしょ」 と、見るなり断言するREINA先生。 「プライド、誇り、邁進、そういうものを感じる。 服は一度でも袖を通せば、その人の気が入り込むの。 ここに並んでいる服は、誰かが着たことあるはずよ」 なるほど、威圧感の理由はそれだったのか!ものすごく腑に落ちた。

警察博物館を出るなり、うなだれるREINA先生。
「なんだか、ぐたーっとしたわ」

それでも不思議迷子はまだまだ続く。 銀座のど真ん中はあまりにも明るいので、ピンポイントで行くことにした。 続いては日本橋に移動し、COREDO日本橋へ。 日本橋一丁目にある人気セレクトショップも入ったビル COREDO日本橋は、その昔、白木屋デパートのあった場所に建てられている。 白木屋デパートは、昭和初期に大火災を起こしたことで有名な百貨店であり、 当時は高層建築物が珍しかったこともあり、死者14名を出している。 とても痛ましい過去を持つ百貨店の跡地なのだ。 銀座から日本橋まで、とぼとぼ歩くこと数十分。 ん!?もしかしてCOREDO日本橋ってあのビルか?



全面ガラス張りの建物を見上げ、思わず足がすくんだ。 以前にCOREDO日本橋へ来たときは、 なんとも思わなかったはずなのに、これは震災後だからであろうか。 大地震が起きたときにこの下を歩いていたら、 ガラスが体中に突き刺さるのではないだろうか。 そんなことを想像してしまう。



信号を渡れば、目の前はCOREDO日本橋。 ところがビルに近づこうとしたら、いきなり突風が吹き始めた。



今まで同じようなビル街を歩いてきたはずなのに、 なぜかCOREDO日本橋の前だけ強いビル風が吹き荒れている。 近くに止めてある自転車もなぎ倒しだ。 髪が乱れ、目を開いて歩けないほどの強風。なんなんだこれは! 「成仏してないんでしょう。こういう場所は、 店舗の入れ替わりも早いと思う。 従業員だって、事件のことを知らない人でも、 なんかおかしいわって感じてるんじゃないかしら」



「見て、向かいは全然そんなことないでしょ」 見れば、確かに道路を挟んだ向かいのビルは、 陽がサンサンとさし、風も吹いていない。



一方のCOREDO日本橋は、入り口が日陰でとても寒い。 そしてこの強風。違いは明快だった。 「飛び降りたのはここでしょう。人が落ちてくるのを感じる」 と、ビルを見上げるREINA先生。



ビルの側面を覆うガラスは、先端がそのままむき出しになり、 ツララのように下へ飛び出すデザインになっている。 このままスコっと落ちてきそうで、冷やっとする。 なんだってこんなデザインにしたのだろうか。 「やばいですね、このビル」と私。 「こういう場所はね、また同じような事故が起こる可能性もあるわよ。 地縛霊がビルの設計者にとりついて、描かせちゃうことがあるのよ」 なるほど、このガラスのデザインは、地縛霊が考えたものだったのか…!!

「このビルは入れません、私!」と、REINA先生は入場をかたくなに拒否。 仕方がないので、いそいそとその場を離れた。



ちなみにフォローを入れておくと、 COREDO日本橋は人気のパン屋さんなどもあり、大変賑わっています!



どっと疲れが出て、カフェで一息つくと、 まるでペットのように襟巻きの狐を撫ではじめるREINA先生。 心が通い合っているかのようだ。 「狐の霊はいないんですか?」と下世話な質問をすると 「この子が私を呼んでいるから買ったのよ。毛皮も可愛がらないとね」とのこと。 狐はとても幸せそうに見えた。

「もっと明るい場所へ行きたいわ。幸せになれるような」 と提案するREINA先生。 確かに銀座であれば、そっちのほうが多そうだ。



日本橋から銀座へ戻る途中、高級スーパー「明治屋」で足を止め、 良い気を感じたのか意気揚々と入っていくREINA先生。 「明治屋」には、珍しいお菓子や缶詰などが山ほど置いてあり、 庶民の入るスーパーとは明るさからして違う。 「こういう場所に足を運んでいると、運気もアップするのよ」と、ご機嫌。 スーパーへ行くたびに、運気がアップするなら安上がりだ。 と思ったが、普段から明治屋に行けるほどリッチな人は、 そもそも運気を持っていそうだ。



銀座へ戻ると、正午を向え歩行者天国が始まっていた。 晴れ渡る青空を眺めながら、 道路の真ん中に並べられた椅子に座るのはとても気持ちが良い。



「ちょっと銀座の神様でも下ろしてみようかしら」 と実にカジュアルに言うREINA先生。



「うん、やっぱりここはいい場所よ。 この椅子に座って、道行く人を眺めていたら、 きっと悩み事の解決方法もふっと浮かぶはず。 明治屋でチョコでもご飯でも買って、 この椅子で食べると、それが幸せへと導くわ」 なんてセレブな休日なんだ!



帰り際、三愛ビルの前に飾ってある猫の置物に目を留めるREINA先生。 通行人を眺めるような形で置かれた猫は、 なんでも恋の招き猫らしく2回撫でるとご利益があるのだとか。 「こんなぽっと出の猫にそんな効力あるんでしょうか?」と訝しがる私に 「あるわよ!」と、REINA先生。 「だからね、銀座へ来たら明治屋でチョコを買って、 歩行者天国で食べて、猫を撫でるの!これで運気がアップするから」 と、なぜか上手いこと締めくくられた。

そもそもそれって、 すごく幸せそうな人の日曜日の過ごし方だよなあと、 私はふと思うのであった。






写真・文 インベカヲリ★ ゲスト IIDA REINA(霊能者)

撮影カメラ・レンズ
RICOH GR DIGITAL